Person 04

  • 瀧淳一正面写真
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    飛鳥クルーズ第11代総料理長

    瀧 淳一

    Junichi Taki

飛鳥ブランドを確立する、
心揺さぶる食の魅力。

料理をしている写真

考え抜かれた料理プランで、
飛躍する船上の食卓。

客船料理人の世界を夢みて23歳の時に乗船して以来、私は人生の半分以上を飛鳥と共に歩んできました。そんな私が現在に至るまで一貫して大切にしていることは「よく考える」ことです。日程が100日間を超える世界一周クルーズにおいては、毎日の食事を楽しんでいただくため、各寄港地に合わせてコーディネートし、日毎のバランスを鑑み、事前に全体の構成を練った上でその日のお客様に最もふさわしい料理を決定します。ディナーでは同じメニューを提供することはありません。さらに器や盛り付けにも気を配り、日々表情を変えて新鮮な気持ちでお召し上りいただけるよう心がけています。クリスマスなど年に一度の特別なディナーは、その年のクルーズが終わった瞬間にはもう来年のメニューを考え始めています。ほぼ一年中料理のことを考えていると言っても過言ではないかもしれません。
飛鳥の料理は国籍を限定しませんが、各ジャンルの伝統をしっかりと受け継ぎつつも、最新のトレンドも常に意識し、リピーターのお客様であっても心に深く刻まれる料理を模索しています。コースの構成を熟考した結果、セオリーである料理の提供順を敢えて変更することもよくあります。一流の料理をそういった柔軟な発想力で飛躍させるからこそ、飛鳥ならではの食の魅力が生まれると信じています。

何度でも湧き起こる感動を、
お客様とわかちあう。

長い乗船歴の中でも印象深いのは、ゲストシェフとして中村勝宏さんをお招きした2010年の世界一周クルーズです。中村さんは日本人初のミシュランガイド1つ星を獲得し、2008年の北海道洞爺湖サミットでは総料理長を務めた尊敬するグランシェフです。バルセロナに寄港した折には市場を共に歩いただけでなく、世界的に有名な三つ星レストラン「エル・ブジ」(2011年閉店)の研究所を見学させていただくことができました。一般公開されていない場所まで拝見し、料理人としては感無量で、本当に感動の連続でした。ありがたいことに、お客様だけでなく私たちスタッフまでもがこうした出会いと感動を得られる点も、飛鳥ならではの魅力だと思います。
最も好きな寄港地は、お客様にも人気の高いエーゲ海のサントリーニ島です。紺碧の海と空、断崖絶壁に並び立つ白壁とのコントラストがどこまでも美しく、何度訪れても魅了されてしまいます。そしてこうした寄港地では、事前に仕事の調整をして、部下たちに外出するようすすめています。感動をお客様と分かち合うことで、クルーズを彩る食卓の重要性をスタッフ一人ひとりが再確認し、料理人としての責任と使命を感じてくれると信じています。

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生涯をかけて探究する
飛鳥ならではの食のおもてなし。

陸上のレストランとは異なり、飛鳥では食事以外でもたくさんの時間をお客様と共に過ごすことができます。料理の感想を直接お伺いする機会も多々あり、中でも「今までの人生で一番美味しい食事でした」「前頭葉が揺さぶられました」などの情熱的なお褒めの言葉をいただくと料理人としてこの上ない喜びに満たされます。
2020年は運航が難しい状況が続きましたが、運休中に少しでも飛鳥を感じていただけるよう、公式YouTubeチャンネルの料理レシピ紹介動画「おうちで飛鳥」を配信しました。あらゆる場面で自粛を迫られる中、飛鳥Ⅱの雰囲気を感じることで乗船気分を思い出していただければ嬉しいです。
そして2025年には新造客船就航を控え、飛鳥ブランドは更なる高まりを見せていますが、私の使命はどんな時も変わらず「食の魅力」を届けることです。それは伝統に新しい発想を加えた斬新な料理であり、心が寛ぐ和の料理であり、寄港地の食材で作る珍しい料理でもあり、毎食変化する食卓の表情でもあります。寄港地によって景色がガラリと変わるように、船内の料理も多彩な輝きを見せる特別な存在でなければなりません。今後も情熱を絶やすことなく、私の人生をかけて「飛鳥ならではの食のおもてなし」を熟考し、探究し続けたいと思います。