飛鳥IIは、ときどき雲間から初春の光のもれる、横浜港大桟橋を静かにそして確かに離れつつある。消防庁音楽隊の華麗な旋律、それと呼応するかのような飛鳥オーケストラのダイナミックな音色。 1000人、2000人とも思われる人々の大歓声と、上半身を揺すってのお見送り。船上の皆様は身を乗りだして手を振り、ご家族に届けとテープを投げる。どの船出も心を打つものだろうが、世界一周ともなると、格別な感動の渦になる。
著者紹介 小泉 澄夫 1934年生まれ。写真家、日本写真芸術学会会員、世界遺産フォーラム主宰。 「日本人の心」をテーマに風景写真を30年以上撮り続けている。ここ15年は、ヨーロッパ・北米大陸・中国を中心に世界各地の世界遺産の写真撮影や、講演活動、執筆活動を行っている。本フォトエッセイの連載は「2008年オセアニア・グランド・クルーズ」以来の2回目となる。 ■著書 「世界遺産ビジュアルハンドブック」