ギリシャは、その中心はアテネであったが、地中海の盟主として植民都市を各地に築き、交易によって莫大な利益を得ていた。もちろん軍事力も強大であり、その面からも富を獲得していた。パルテノン神殿は、そうした総合力の象徴として建立なされたのだろう。 とはいっても、ギリシャ人が造るのだから、建築芸術、建築技術の粋を結集したものとなっている。入口の門を入ると、神殿を斜め方向から見る。巨大建造物は斜めから見ると美しいという上質な美意識を、ためらわずに表出している。
著者紹介 小泉 澄夫 1934年生まれ。写真家、日本写真芸術学会会員、世界遺産フォーラム主宰。 「日本人の心」をテーマに風景写真を30年以上撮り続けている。ここ15年は、ヨーロッパ・北米大陸・中国を中心に世界各地の世界遺産の写真撮影や、講演活動、執筆活動を行っている。本フォトエッセイの連載は「2008年オセアニア・グランド・クルーズ」以来の2回目となる。 ■著書 「世界遺産ビジュアルハンドブック」