クルーズ中の密かな楽しみが、船内新聞「アスカデイリー」の「船上茶飯事」というミニコラムでした。毎回書き手が変わり、今日は増田アシスタントクルーズディレクターの回。「クルーズを経ると気温の変化は季節ではなく緯度の変化として感じるようになる」との言葉に思わず膝を打ち、それと同時に日本という小さな島国の四季の愛おしさに思いを馳せました。
「日本は寒いねえ」と互いに声を掛け合いながら、入港風景を一目見ようとベイブリッジの手前で大勢のお客様がオープンデッキに集まりました。あいにくの曇り空でしたが、橋の下を通過する時のざわめきはどこかシドニーのハーバーブリッジを思い起こさせて、遠く横浜で不意によぎったその既視感になぜだかひとり可笑しさがこみ上げて来るのでした。
船内のモニターに映し出された広域航路図がひとつの輪を描いた午前9時、飛鳥IIは予定通り横浜港へ入港。午後14時には船は再び出港し、残る神戸発着のお客様を乗せて最後の航海を開始しました。静けさを引き連れた午後の船内は全力で駆け抜けたあとの緩やかな惰走といった心地で、期せずして来たる日常に向けて心と体を整える格好の時間となりました。