岸壁を離れるころから、空が少し明るくなってきて、雨もやみはじめた。 7デッキで見送りの方に手をふっていた数少ない乗客のあいだから、ちょっと驚きの声があがった。何事かと振り返ると、強風が雲を吹き飛ばしたのか、富士山がその美しい姿を現したのだ。 写真が小さいのでわかりづらいかもしれないが、写真中央に雪をかぶったすがすがしい富士山が見える。 7デッキで海風にあたりながら、遠ざかる横浜港と雄大な富士山を眺めながら、ついに105日間の世界一周に旅立ったのだという胸の高鳴りを、これが旅情かとしみじみ感じ入る。
著者紹介 青木 勝 1944年生まれ。東京工芸大学卒業後、スポーツニッポン新聞東京本社を経てフリーに。70年、日本航空嘱託契約カメラマンとして飛行機を撮りはじめる。航空雑誌、カメラ雑誌などに、飛行機写真を連載、写真展開催などで飛行機の魅力を広め、独自の飛行機写真の確立と発展 に努める。「2000年 世界一周クルーズ」、「2004年 南極・南米ワールドクルーズ」、「2009年 世界一周クルーズ」に乗船。(社)日本写真家協会会員、(社)日本旅行作家協会会員