午後6時半に帰船。7時からのローカルショーを見る。女性歌手2人と男性歌手の3人が、かわるがわるポルトガルを代表する「ファド」を、サウダーデ(哀愁・郷愁)たっぷりに歌い上げる。ほかに、色彩豊かな民族舞踊も見られた。 青木は疲れたので、9時の出港風景は見ず、写真の整理をしてすぐ寝るという。 今日の日没は8時56分。その直後の出港を見ようと、私はもやい綱がまだ外されない8時45分ころから9デッキの船尾に出てサンタ・アポローニア客船ターミナルの光景を眺めていた。プールサイドで行われているボンボヤージの音楽がかすかに聞こえるだけで静かだ。出港しても船尾には誰も出てこない。 少しして青木が出てきて、慌ててカメラを取りに戻った。それからテージョ川を出るまで、大興奮でシャッターを切り続けた。 今朝は日の出直前の、ベレンの塔と発見のモニュメントがシルエットになった美しい入港写真が撮れたので、6月2日のフォトエッセイの冒頭にはその写真を使用するつもりだったが、出港時の写真に変更。ベレンの塔である。
著者紹介 青木 勝 1944年生まれ。東京工芸大学卒業後、スポーツニッポン新聞東京本社を経てフリーに。70年、日本航空嘱託契約カメラマンとして飛行機を撮りはじめる。航空雑誌、カメラ雑誌などに、飛行機写真を連載、写真展開催などで飛行機の魅力を広め、独自の飛行機写真の確立と発展 に努める。「2000年 世界一周クルーズ」、「2004年 南極・南米ワールドクルーズ」、「2009年 世界一周クルーズ」に乗船。(社)日本写真家協会会員、(社)日本旅行作家協会会員