昨夜22時、飛鳥Ⅱはシンガポールを出港した。同じ岸壁に停泊していたオーシャンドリーム号も同じ時刻に出港するというので、実際は予定の22時よりも3分早く、岸壁を離れた。 オーシャンドリーム号の人たちが、「行ってらっしゃい」と手を振り、飛鳥Ⅱの我々も「行ってきます。よい旅を」と応じて、にぎやかな出港になった。 その後、部屋のバルコニーに出て、遠ざかるシンガポールの灯りを眺めていて、ふと気づくと、目の前に南十字星が輝いているではないか。私たちはいま、遠い南国に来ているのだ。 そして今日4月12日、飛鳥Ⅱはマラッカ海峡に入った。午前10時ころに、海峡で一番狭く水深が浅い難所を通るというので、バルコニーに出てみると、海の色がミルクを足したような淡い緑色になっていた。思いがけない美しさ。 昼食は、海峡をするりと通り抜けるという験を担いで鰻重。
著者紹介 青木 勝 1944年生まれ。東京工芸大学卒業後、スポーツニッポン新聞東京本社を経てフリーに。70年、日本航空嘱託契約カメラマンとして飛行機を撮りはじめる。航空雑誌、カメラ雑誌などに、飛行機写真を連載、写真展開催などで飛行機の魅力を広め、独自の飛行機写真の確立と発展 に努める。「2000年 世界一周クルーズ」、「2004年 南極・南米ワールドクルーズ」、「2009年 世界一周クルーズ」に乗船。(社)日本写真家協会会員、(社)日本旅行作家協会会員