飛鳥Ⅱは時化ることが多いという海域を航行中だが、今朝の海はべた凪である。 青木は目覚めるなり、深夜に汽笛が鳴ったとけげんな顔をしたが、それは、タイタニック号の沈没地点近くを通過した時の哀悼の汽笛なのであった。私は汽笛が鳴ることは覚えていたが、眠りが深くてまったく気付かなかった。 船内教室でまだ一度も見学していない、コントラクトブリッジ教室で午前10時から、模範試合をするというので、カードルームに出かけた。 ブリッジの講師、山邑幸子先生と加藤佐知子先生が上級クラスの生徒と試合をするのをテレビに映し出して、坂本弥生先生が解説をする。その後、2組にわかれての試合が12時近くまで行われたが、私にはチンプンカンプンである。すると、生徒さんのひとりが「私は一カ月以上この教室に通っているのですが、未だにチンプンカンプン、さっぱりわかりません」とおっしゃる。それでも教室に通い続けたくなる魅力が、コントラクトブリッジにはあるらしい。
著者紹介 青木 勝 1944年生まれ。東京工芸大学卒業後、スポーツニッポン新聞東京本社を経てフリーに。70年、日本航空嘱託契約カメラマンとして飛行機を撮りはじめる。航空雑誌、カメラ雑誌などに、飛行機写真を連載、写真展開催などで飛行機の魅力を広め、独自の飛行機写真の確立と発展 に努める。「2000年 世界一周クルーズ」、「2004年 南極・南米ワールドクルーズ」、「2009年 世界一周クルーズ」に乗船。(社)日本写真家協会会員、(社)日本旅行作家協会会員