桟橋に停泊していたもう一隻の通船も観光客でいっぱいだったが、プラヤデルカルメンの町はまだ朝のまどろみの中にいた。町を出てしばらくすると、見渡す限り、緑が目に鮮やかなジャングル以外に何もない。地平線まで一直線に延びている道路をひたすら走る。 日本人ガイド新宮さんが、昨日チチェンイツァ遺跡は大雨で、今日もスコールが来そうですと話し、実際バスは一度スコールの中に入った。3時間のジャングル走行を経て、11時30分遺跡に到着した。 テレビや雑誌、書籍の写真で何度も見たことのあるチチェンイツァ遺跡だが、実際にその場に立つと、イメージが全然違う。周囲をジャングルに取り囲まれているせいか、ホテルや町並がすぐそばに広がっているエジプトのピラミッドにはない、ある種宗教的で神秘的な空気、荘厳さが漂う特別な場所という雰囲気が、数多くの観光客で賑わっているにもかかわらず、濃厚である。
著者紹介 青木 勝 1944年生まれ。東京工芸大学卒業後、スポーツニッポン新聞東京本社を経てフリーに。70年、日本航空嘱託契約カメラマンとして飛行機を撮りはじめる。航空雑誌、カメラ雑誌などに、飛行機写真を連載、写真展開催などで飛行機の魅力を広め、独自の飛行機写真の確立と発展 に努める。「2000年 世界一周クルーズ」、「2004年 南極・南米ワールドクルーズ」、「2009年 世界一周クルーズ」に乗船。(社)日本写真家協会会員、(社)日本旅行作家協会会員