雑誌「CRUISE」 2019年6月号掲載-飛鳥Ⅱ特集ページ- 

飛鳥Ⅱで島めぐり あたたかさを乗せて「春」を愛でる旅
3月の休日で横浜発着のクルーズに参加した。目指すは瀬戸内海に浮かぶ小豆島と、初寄港となる和歌山・日高港。そこかしこで春を感じ、幸せをおすそ分けしてもらった島への船旅だった。
写真 = 羽渕みどり  文 = 柴﨑朋実
小豆島・坂手港沖に停泊中の飛鳥Ⅱを通船から望む

小豆島の自然と文化に触れ、日高のもてなしに沸く

飛鳥Ⅱは、3月20日夕方に横浜を出発した。小豆島、和歌山県の日高港をめぐるクルーズである。小豆島を訪ねるコースはほぼ毎年行っており、飛鳥Ⅱの島クルーズの定番だ。そろそろ桜開花の便りが聞かれ、暖かさが増してきた季節とあって気持ちが浮き立つ。

終日航海を経て、まずは小豆島・坂手港へ。飛鳥Ⅱは沖留めとなるため、通船で上陸してツアーバスに乗り換えた。

瀬戸内海に浮かぶ小豆島は、香川県最大の島。温暖な気候を生かしてオリーブや柑橘類の栽培が行われており、400年の伝統を誇る醤油造りも盛んだ。ツアーでまず訪ねたのは、伝統の木桶仕込みにこだわる「金両醤油」。国の文化財に指定された醤油蔵は築1 0 0年以上で、醤油造りには不可欠な酵母菌が住み着いているという。試食した醤油はうまみが濃く美味。蔵の隣の売店でつい何本も買い込んでしまった。地方発送もできるようだったが「クルーズなら重い荷物も客室に置いておけるから」と、そのまま船まで持ち帰った。

金両醤油の次に向かったのは小豆島屈指の景勝地、寒霞渓である。険しい崖をロープウェーで登った山頂駅は標高612メートル。駅近くにある展望台からは、曇天の下で霞んではいたが、穏やかな瀬戸内海と飛鳥Ⅱが見えた。晴れて視界がクリアだったらさぞ爽快だっただろうとは思うが、再訪した時の楽しみにとっておこう。

昼食会場は、干潮の時だけ現れる海中の道、通称「エンジェルロード」の近くに建つ小豆島観光ホテルだ。ここでの昼食は地元産の食材尽くし。三種の小豆島産醤油とともに食す瀬戸内海産の鮮魚、小豆島名物のそうめん、香川名物の牛・豚・鶏のすき焼き風煮物、醤油アイスクリームなど。醤油、そうめん、そしてオリーブと小豆島は名物が多く、豊かな島だ。それを実感しながらのランチで、胃も心も満たされた。

オリーブの実

小豆島・井上誠耕園の雨露できらきらと輝くオリーブの実

伝統のスギ桶仕込みにこだわる金両醤油。醤油蔵は国の有形登録文化財

ランチ

小豆島のツアーでは、地元の旬の食材をふんだんに使ったランチを味わった

展望台

寒霞渓の展望台から坂手港方面を眺める

寒霞渓では雲に覆われていた空が、ツアー最後の訪問地である井上誠耕園に着く頃には明るくなってきた。オリーブ畑の先に見える海がキラキラ光っている。

井上誠耕園はりんごやオリーブの生産農家で、自社の農産品を生かしたショップやレストラン、観光農園も運営している。そして、飛鳥Ⅱ船内で販売している飛鳥オリジナルブレンドのオリーブオイルの製造元でもある。ツアー一行は、まずレストランにてオリーブオイルのテイスティングを体験した。教えてもらった通り、試飲用カップを手のひらで温め、香りを立たせてから口に含む。実の品種や栽培時期などによってこれほどオイルの香りや味が異なるのか、と新鮮な驚きがあった。

そして建物に隣接するオリーブ畑に下りて、島でのオリーブ栽培の歴史や収穫時期、栽培方法などについて説明を聞く。案内してくれた西田征弘さんによると「スペインやイタリアなどでは機械で実を振り落として収穫しますが、小豆島は手摘みなので、実の傷みが少なく高品質なオイルになります」とのこと。確かに試食させてもらった島産のオイルは香り高く味わい豊かだ。当然ながら、こちらのショップでも財布のひもが緩んでしまった次第。

日が傾き始め、飛鳥Ⅱへ戻る時間となった。通船を待つ間、坂手港周辺を少し歩いてみた。瀬戸内国際芸術祭のために制作されたというオブジェの向こうに瀬戸内海が広がり、飛鳥Ⅱが停泊しているのが見えた。穏やかな風景に後ろ髪を引かれつつ通船に乗り、少しずつ遠ざかる島を眺めた。

井上誠耕園

瀬戸内海を望むオリーブ畑

西田征弘

熱心にツアーの案内をしてくれた井上誠耕園の西田征弘さん

小豆島の余韻が残る中、翌日は日高港に入港した。飛鳥Ⅱ初寄港とあって、歓迎イベントは盛大なものだった。地元の物産品の販売ブースがずらりと並び、太鼓に合わせて大蛇が登場する「じゃんじゃか踊り」などのアトラクションが喝采を浴びる。花卉栽培が盛んな土地柄ということもあり、ハーバリウムやフラワーアレンジメントを体験できるワークショップが人気を集めていた。

港からは、無料のシャトルバスで道成寺を訪ねた。和歌山最古の寺で、能や歌舞伎の演目として知られる安珍清姫伝説の舞台となった寺でもある。港で見たじゃんじゃか踊りの大蛇も、この伝説がモチーフとなっているそう。境内の桜が咲き始めていて、本堂や三重塔とのコントラストが美しかった。

日高港で、たまたま地元の方に声をかけられた。住まいは港からは少し離れているが、飛鳥Ⅱを一目見ようと入港前から待っていてくれたそうだ。「人生がいつ終わっても後悔しないように、興味があったらすぐに動くんですよ」という一言が心に残った。

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<p class=みかん、紀州犬などをモチーフにした和歌山のゆるキャラが大集合してわれわれを出迎えてくれた

日高港の歓迎イベントでは、恋に破れた清姫が大蛇に変身したという「安珍清姫伝説」をモチーフにした「じゃんじゃか踊り」が披露された

三重塔

桜に彩られる道成寺の三重塔

参道

道成寺へ向かう参道は素朴な雰囲気。お土産品に混じって庭先で採れた柑橘類なども売られていた

日高港

飛鳥Ⅱとしては初入港の、和歌山県の日高港。和歌山といえば真っ先に連想する梅製品のみならず、鯖のなれ寿司、地元産のアンチョビや蜂蜜など多彩な売店が並び、飛鳥Ⅱの乗客も興味津々

料理にイベントに船内を彩ったさまざまな「春」

今回、船内では若い世代の乗客を普段よりたくさん見かけた。春分の日と週末を利用した参加しやすい日程だったことに加え、クルーズ中に飛鳥Ⅱ主催の卒業祝いパーティー(事前申込制)が予定されていたからだ。

パーティーは、横浜を出航した翌日の終日航海日に開催された。参加したのは、この3月に卒業を迎える小学生から大学生までの子供たちとそのご家族。和やかな雰囲気の中、堤義晴船長が卒業生たちにエールを送る。「困難にぶつかっても負けないで。しけでも進む船のように、前に進み続けることで道が開けます」という航跡になぞらえた言葉が大人の心にもしみる。続いて、乗船直後に撮影したという卒業生たちによるビデオメッセージが上映された。画面に映る彼らのまっすぐな表情と言葉がまぶしくて、「よかったねえ」と顔がほころぶ。

パーティー終盤には、今回のゲストエンターテイナーとして乗船していた東京混声合唱団が『旅立ちの日に』など、卒業にちなんだ曲を披露してくれた。どれも馴染み深い曲で、家族一緒に口ずさむ姿にも涙腺が刺激されてしまった。

袴姿が印象的だった加納志帆さん・史花さん姉妹は、親戚や家族10人で乗船していた。「今回のクルーズに招待してくれたのは祖父。飛鳥Ⅱには今までもみんなで乗船したことがあり、楽しい思い出ばかりです。そんな船に祝ってもらえて光栄です」と話す姉の志帆さんは、この春大学を卒業して希望の会社に就職するそうだ。

参加者それぞれが晴れがましい表情で、居合わせた人たちみんなが幸せを感じるイベントだった。

この日、もう一つの楽しみがあった。「春の日ディナー」と銘打ち、季節の食材や今話題のスーパーフード※をふんだんに盛り込んだ夕食だ。次から次へと見目麗しい料理が運ばれてくる。どれも春を感じさせる美しい彩りで、素材を生かした繊細な味わいがすばらしい。食後、ウエーターがバスケットを携えてチョコレートの小箱とメッセージカードを手渡してくれる趣向も心に残った。

のどかで幸せで、おいしい。寄港地でも船内でも「春っていいなあ」と感じる島めぐりクルーズだった。

春の日ディナー

散りばめられたピンク色が愛らしい「春の日ディナー」。味はもちろん、盛り付けも驚きに満ちていた

ケーキ

卒業祝いパーティーで振る舞われた、春らしい色合いのケーキ

祝辞

ちょっぴり緊張した表情で、堤船長の祝辞を噛みしめる

飛鳥Ⅱの顔に聞く!「お気に入りの島は?」

アホウドリの楽園、伊豆諸島・鳥島です。

船長 堤義晴さん

船長
堤義晴さん

鳥島は全島が天然記念物なので上陸はできませんが、周遊するたびに「ここがジョン万次郎こと中浜万次郎が漂着して143日間を生き延びた島か」と思いを馳せています。飛鳥のロゴマークでもあるアルバトロス(アホウドリ)が見られます。

好きなのは小豆島。紅葉も見どころです。

ホテルマネージャー 吉田悟さん

ホテルマネージャー
吉田悟さん

瀬戸内海を東から西へ航行するとき、朝一番に小豆島の南にある白浜山がきれいに見えると気分が高揚します。また、小豆島に初めて寄港した時にいただいたオリーブが本当においしくて、感動したこともよく覚えています。

飛鳥Ⅱでめぐる海外の島もおすすめです!

クルーズコーディネーター 江頭紀光子さん

クルーズコーディネーター
江頭紀光子さん

日本の島も好きですが、おすすめはグアムとサイパンです。年末年始に人気のリゾートアイランドをめぐります。今年は初めてゴールデンウィークにもコースを設定し、ほぼ満室の盛況ぶり。程よく洋上航海日があってのんびりできるのも魅力です。


取材メモ

■取材メモ

春の休日 小豆島・紀州日高クルーズ
日程:2019年3月20日(水)〜24日(日)
コース:横浜~小豆島〜日高(和歌山)~横浜
クルーズ代金:18万8000円(Kステート)~94万4000円(Sロイヤルスイート)
船名:飛鳥Ⅱ(郵船クルーズ)/総トン数:5万142トン/乗客定員:872人/乗組員数:約470人


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