photo essayフォトエッセイ

飛鳥Ⅱ

2025/4/6(日)

洋上の金継ぎ教室と「影がなくなる日」

  • 緯度:N 9度 16分
  • 経度:E 110度 14分
  • 天気:晴れ
  • 気温:29.0 度
  • 速力:17.9 ノット
  • 海域:南シナ海
  • 寄港地:終日航海日

世界を旅する「飛鳥Ⅱ」の船上では折々に、和の文化を思わせる教室も催されます。今航で魅力的なもののひとつといえば、写真の「金継ぎ教室」でしょう。教えてくれるのはシドニー在住の諸岡淳先生。奥様で、同じく金継ぎの先生でもあるひとみさんがフォロー役。きょうの午前中にあったのは、現代の素材で手軽に楽しむ「モダン金継ぎ入門教室」です。

本来は漆を使って時間を掛けて行うものですが、2液性のエポキシ接着剤とパテを使えば誰でも簡単に挑戦が可能。シドニーでも教室を営む諸岡先生曰く、「スシ、サムライ、キンツギ」と紹介されたことがあるほど人気の日本文化だそう。壊れたものも直して大切に使うことができ、決して前と同じではないけれど新たな個性と美を纏(まと)う。どこか人生哲学を示唆するような魅力を備えます。

そして昼、キャプテンの放送で案内されていた「影がなくなる日」を体験しようとプールサイドに行きました。太陽が真上に来るので自分の影は真下だけ、ペットボトルなど筒状のものは完全に影がなくなります。お客様の中には、なんと天測航海に使う六分儀を「この日のために持ってきた」という方もいらして、航海士たちと楽しく言葉を交わしていました。

高橋 敦史

著者紹介/高橋 敦史

1972年生まれ。東京都出身。
旅行媒体を主とするフリーランスの編集ディレクター・紀行作家・フォトグラファー。クルーズ写真家として各媒体での撮影・執筆を担当するほか、旅のジャンルは温泉旅行からバックパッカー旅、リゾートなどまで経験豊富。2014年世界一周クルーズより「飛鳥Ⅱ」の写真教室講師・フォトエッセイ担当を務め、以後ロングクルーズに度々乗船している。