紅海を航行してきたが。海原の色は赤くはなかった。今は、スエズ湾に入り小高い山や砂丘が見えるほど両岸の間隔が狭まった。スエズ運河が近づいたのだろう、船足も遅くなってきた。それでも、相変わらず飛鳥IIの航跡は美しい。 航跡を見ることは、クルーズの味わいの一つといえよう。緯度や光線の角度によって千変万化する。飛鳥IIはさらに速度をおとし、スエズ運河の待機位置に、錨をおろした。明日は早朝発、一日をかけて、運河を航行する。
著者紹介 小泉 澄夫 1934年生まれ。写真家、日本写真芸術学会会員、世界遺産フォーラム主宰。 「日本人の心」をテーマに風景写真を30年以上撮り続けている。ここ15年は、ヨーロッパ・北米大陸・中国を中心に世界各地の世界遺産の写真撮影や、講演活動、執筆活動を行っている。本フォトエッセイの連載は「2008年オセアニア・グランド・クルーズ」以来の2回目となる。 ■著書 「世界遺産ビジュアルハンドブック」